
「代行って、いつからあるの?」──運転代行のはじまりをたどってみた
いまでは当たり前になった「運転代行」サービス。
飲み会の帰りに「代行呼ぼうか」と言えば誰もがすぐに理解してくれるし、安心してお酒を楽しめる時代になりました。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。
「そもそも運転代行って、誰が、いつ、思いついたの?」
今回はそんな“原点”に迫ってみたいと思います。
■ きっかけは「誰かのために運転してあげよう」
運転代行のはじまりは、1970年代の日本・東京都内。
この頃、飲酒運転による事故は全国で増加傾向にありました。
当時は今ほど法規制も厳しくなく、「ちょっとくらいなら大丈夫」と運転してしまう人も多かった時代です。
そんな中、ある飲食店の店主が常連客にこう声をかけたと言われています。
「飲んじゃったなら、俺が代わりに運転して送ってくよ」と。
これが、日本の運転代行の原点だと言われています。
もちろん最初はビジネスではなく、あくまで“好意”として始まったものでした。
でも、その需要は明らかでした。
「酔ってしまったけど車で来てしまった」
「タクシーじゃなくて自分の車で帰りたい」
そんな人のために“運転を代わってあげる”サービスは、少しずつ広がっていきます。
■ 1980年代:業者が登場、でも法整備はまだ
1980年代に入ると、個人で行っていた「代行運転」に目をつけた人たちが、事業としての運転代行を始めます。
今のように営業所があり、追走車(随伴車)を使うスタイルはこの頃から。
とはいえ、当時はまだ法律もルールも整っておらず、「無届け営業」「無保険」「運転技術もバラバラ」といったケースも多かったようです。
このころは、まさに運転代行の草創期。
「運転手が逃げた」「車を傷つけられた」などのトラブルも少なくなく、利用者側にもまだ「怪しいサービス」といった印象があったのも事実です。
■ 1990年代以降:法整備と認知の広がり
1990年代後半になると、飲酒運転の罰則が厳しくなりはじめ、同時に代行業への関心も高まります。
1994年には「道路交通法施行規則」が改正され、運転代行業者は公安委員会への認定が必要となりました。
この改正により、無届け業者の締め出しや、保険加入の義務化、随伴車の条件などが明確にされ、業界の信頼性が一気に高まりました。
2000年代に入ると、代行利用は地方でも一般化し、
「代行を呼ぶのはマナー」
「お酒を飲む人の常識」として定着しはじめます。
■ 現代の運転代行は“IT×安全”で進化中
そして現在。運転代行はさらに進化しています。
昔は電話で呼ぶのが当たり前でしたが、今はスマホアプリで手軽に呼べる時代。
GPSで位置を指定し、金額も事前に表示、キャッシュレス決済対応。
「ちょっと面倒」「時間がかかる」といったイメージは徐々に払拭されつつあります。
また、業界団体によるドライバー講習や研修、安全管理の徹底なども行われており、プロ意識を持った“サービス業”としての運転代行が確立されてきています。
■ 代行は“安心”と“人の想い”でできている
考えてみれば、「他人の車を運転して送り届ける」なんて、責任重大な仕事です。
他人の命と車を預かるわけですから、技術と信頼がなければできません。
でも、その根っこには50年前と変わらない“やさしさ”があります。
「飲んだなら、代わりに運転してあげよう」
「事故を起こさせたくない」
そういう人の想いが、今の運転代行の土台を支えているのです。
■ 最後に:便利なだけじゃない“使命感”のある仕事
今や、運転代行は飲酒運転防止の柱ともいえる存在。
飲んだ人だけでなく、社会全体の安全を守るために、静かに走り続けています。
便利だから使う。それももちろんOK。
でもその背景にある歴史や想いを少しだけ知ってもらえたら、
代行ドライバーさんたちへの目も、ちょっと変わるかもしれませんね。
コメント